前回の新年会が終わってすぐに、部長はたびたび私の働くB支店に来るようになった。
多い時は週1、2回、少なくとも2週間に1度は顔を合わせていたと思う。
もちろん表向きの理由はB支店の人とのミーティングのためだったり、出張で近くに来てA支店に戻るよりもB支店で作業した方が効率がいいと判断したからだったりしたが。
私には「もしかしたら私に会いにきているのかも?」という気持ちもあったが、自意識過剰であれば恥ずかしいだけなので何も考えず、部長と会った時は普通に接するようにしていた。
あの大規模新年会で部長と仲良くなってから、部長は飲み会で会うたびに私のことを褒めてくるようになった。
具体的には「深瀬さんみたいに若くて美しい人が来てくれるだけで嬉しい」とか。
グループでの新年会のときに、私が「部長が誘ってくださったから参加しようと思ったんです」といったことを言うと「君が若くて綺麗だから誘ったんだ」といってくれたりだとか。
この頃は、「口説かれてるか?」とも自覚しつつあったが、少なくとも部長から嫌われているわけではないんだなくらいにしか留めていなかった。
そして飲み会でも1次会は私に全く興味のないようなそぶりで、2次会では私の隣をバッチリキープしているところも「会う機会も少ないのに結構気に入ってくれてるんだな」と思うくらいだった。
いや、もしかすると私の中で部長からの好意をどう受け止めていいか分からない部分もあったのかもしれない。
部長という地位のある人と私のような組織の末端の人間。
それに圧倒的な年齢差。(私が20代後半、部長は50代半ば)
正直いえば部長はすごくイケメンだし、地位もあり仕事もでき、頭もいい。
惹かれる部分がないではないが、やはり年齢差がある。
向こうも私のことなど恋愛対象外でしかないだろうという気持ちもあった。
(ちなみにこの頃はまだ部長が妻子持ちとは知らなかった。勝手にバツアリかと思っていたくらい)
私も今まで付き合った人は年上ばかりだが、せいぜい5〜6歳上の人までだ。
それ以上歳上は未知の世界だった。
とにかく新年会以降は会う回数、話す回数がかなり増えていったことを覚えている。
そしてこんな日々が続いた4月のこと、とうとう私は部長から個人的なお誘いを受けることになる。
つづく